Bドクターの指示で、市内にある別の大きな総合病院に、アイソトープという検査をしに行きました。甲状腺に集まる性質のあるヨウ素という物質の、放射性同位元素を体内に注射し、それが集まる様子を専用の器具で放射線を追うことによって画像に収める、だいたいそんな説明を受けました。
この検査に臨むに当たって、若干の食事指導が入りました。ヨウ素の集まり具合を見るため、それに影響しない食べ物を選ぶようにとのことでした。海藻やヨード強化卵などを避けるのはもちろんですが、米よりも麦の方がヨウ素が少ないので1日1食は麺やパンにすること、化学調味料は摂らないことなど、ドクターに食べ物のことを言われたのはこれが初めてです。私はこれ以来今日にいたるまで、このときの指示を守って暮らしています。
紹介状を持って受付を済ませ、地下1階にある検査室に向かいます。病院の地下って、霊安室しかないようなイメージがあってちょっとビビリましたが、他にもいくつかの検査室があった気がします。確か、放射線系のものばかりだったような…。
私が入った検査室は、広々とした中にぽつんぽつんと離れて2〜3台の機械があり、離れた機械で検査をしている人が居ました。私もその一つに案内されて横になると、被ばく防止の分厚いエプロンをした年配の看護婦さんが、金属製のペン立てのような物に入れた金属のカバーがついた注射器と、翼状針という長いチューブのついた点滴の針のような物を持って来ました。彼女はそれを私の腕にセットし、ゆっくり時間をかけながら注射すると、仰向けになってとにかく動かないように、と言って行ってしまいました。
それから男性の技師の方が来て、私の目の前ぎりぎりに胸部レントゲンの時胸を当てる板のような物をセットし、これから1時間(2時間だったかも)とにかく動かないでじっとしているように、と言って行ってしまいました。
これからが長かった。とにかくじっとしていなくちゃいけない、目の前には白い板があるだけで、聞こえてくるのはかすかな機械のうなる音だけ。確かに痛くも痒くもなくて、体へのダメージはなさそうな検査ですけど、看護婦さんの重装備ぶりやこの検査室の造りを見ても、放射線を扱う緊張感がびしびし伝わってきます。だから若い看護婦さんじゃなかったのかなーとかいろんなことを考えながら、しかし動くなと言われている以上寝るわけにも行かず、つばを飲み込むのもおっかなびっくりでした。何もしないでじっとしているだけ、これは辛いです。
それから数日後、検査の結果が出る頃だと言われた日に、Bドクターのところに行きました。アイソトープで撮ったフィルムを、私にも見せてくれたんですけど、真っ暗な中に白い点々が蝶の羽のような形に集まっているのが見えました。
「奇麗に集まっていますねー」とBドクター。この検査で、点々の集まる形がおかしかったり、極端に濃い場所があったり、逆に集まらない場所があったりしたら、それは甲状腺に腫瘍があることを意味するそうです。私の場合はそれが無かったので、何らかの理由で甲状腺が腫れて働きすぎになっているだけ…甲状腺機能亢進症、良性の甲状腺腫と診断されました。
並行して細かい血液検査もしており、その結果もつき合わせての診断です。バセドーとは違うのか? と聞いたところ、そうではない、と先の病名をつけられたんです。細かい数字は覚えていないんですけど、T3、T4と2種類ある甲状腺ホルモンと、これらがたんぱく質とくっついていないフリーの(だったかな?)FT3、FT4の全てが正常値より高く、脳下垂体から出る甲状腺刺激ホルモンTSHがとても低かったはずです。
ここから、薬を飲む日々が始まりました。メルカゾールと言う抗甲状腺薬を、最初は1日に4錠と、長期にわたって大量に薬を飲む人によく処方されるマースレンと言う胃薬が出ました。だけど私は、この胃薬を飲むと決まって調子悪くなるんです。なのでこれだけは断っちゃいました。
このメルカゾールという薬は、飲んだからと言って、途端に熱が下がったりめまいがしたりみたいな手ごたえ(?)があるわけではないんです。でも、効果は間違いなくあったようで、着実に私の体は変化を始めたのでした。
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